川村 みきをのメモ帳

日々のアウトプットをメモっています。

コミュニケーション力とその発想|りんごのイラストのお話03CR010

 

コミュニケーションが取れないから取れているフリをする

 

 

周りとちゃんとコミュニケーションが取れていることで、発注元と発注の経緯の情報を受け取れる立ち位置にいて、実際に青森県の発注元まで夜行バスで行ってりんご農園の方の話を聴き、収穫したりんごを農家の軒下で磨いているおばぁちゃんのイラストを描いて作品として納品。

そこからイラスト制作の活動を始めてわずか半年で大型の案件を受注したクリエイターの彼女と、案件の納品完了後に関係者で打ち上げに行った新宿の居酒屋で率先して彼女の隣に座りいろいろとお話を聴いた。

彼女の高いコミュニケーション力の秘密

わたし自身の学習の為に彼女の高いコミュニケーション力の秘訣というか、やり方や考え方をどうしても知りたかったのだ。だけど、彼女の口から聴かされた内容はとても意外なものだった。

それは・・・・

〝案件を受注した彼女はつい最近まで、ひきこもりでコミュニケーションというものには程遠いところにいたということ〟

コミュニケーションが取れる人を演じていた

そしてこの半年間ほど彼女は・・・

〝ずっと、コミュニケーションが取れる人を演じていたということ〟

期待していた内容とはかけ離れた事を聴いたわたしは戸惑いながらも更に突っ込んで聴いてみた。

そしていろいろとその背景が分かってきた。

人と話すことが苦手だった彼女の半生

 

彼女は小学校の時から友人も少なく、人と話すのが苦手だったということ。 その為にイジメに合ったこともあり、イラスト・デザインの専門学校に行ってもその性格は変わらなかったそうだ。

卒業して、何とか印刷会社のオペレーターとして就職が出来て、幸いその会社の社長や先輩方にとてもよくしてもらったという。

会社は居心地が良く、コミュニケーションを取る相手も社内の人や顔馴染みの業者の人だけで、ほとんどストレスを感じなかったそうだ。

でも、勤めはじめて半年ほど経った頃、彼女は先輩達を見ていて急にどうしようもない不安に襲われたそうだ。

会社員人生に感じた恐怖心

 

彼女には彼女の6年先輩と11年先輩が社内に居て、彼女の目に映るその人達はずっと限られた範囲の中で日々同じ暮らしを繰り返していて、社内も居心地がいいから特に大きな不安も無く、そして大きな期待も無く、ただ寝て起きて会社に行くだけの暮らしがこの先に何年も彼女自身にも待っていると思うと、身の毛もよだつほどにおぞましく感じたそうだ。

このまま、半年や1年、2年、3年と時間が過ぎてしまうときっと、心も身体もそんな日常に慣れてしまってそのうちに何も感じなくなるんじゃないだろうか・・・?

そう思うといてもたっても居られなくなり、とにかく何でもいいから手をつけられることから始めたそうだ。 そして知り合いのツテを通じて、わたしの友人の制作会社の社長につながり、フリーのイラストレーターとして会社員と平行して仕事を始めることになった。

そしてすぐに彼女は壁にぶち当たることになる…

 

困難続きのフリーのイラストレーターとしての活動

 

フリーとしての経験は当然ナシで、画力も他の人を見ているとどちらかといえば自分は低いと思う。

イラスト制作は学校は卒業したが、好きでイラストを描いてたまに展示会イベントに出たり、個展を開いた程度の自己満足のレベル。

Webサイトなんてよく分からないし、パソコンもインターネットを見る程度でそれほど得意ではない。 性格も内向的で学生の頃はゲームをやって時間をつぶしたり、部屋にこもってイラストを描いたりしていたので、人との関わりがとにかく苦手。

途方に暮れても諦めることなく

 

自分自身を冷静に見つめた時、彼女は途方に暮れてしまった。

〝私に何が出来るんだろう・・・こんな私にイラストやデザインの仕事をくれる人なんているんだろうか・・・〟

そして周りを見渡した時、他のイラストレーターはみんな絵が上手くて独特の世界観を持っているように思えた。そう思うとますます自信が損なわれていった。

普通ならそこで諦めるか、それ以上なにも考えなくなるところだけど、彼女は違った。

彼女はこう考えた。

〝他のイラストレーターはみんな素敵な絵を描くし独特の世界観を持っているけどそのことばかりに固執しているように思う。〟

〝そしてその周辺に居るイラストレーター達もまた、上手な絵を描くことと独特の世界観を演出することに躍起になっている。〟

〝でも、それって自己満足の度合いをどんどん深くしていっているだけなのではないのかな・・・?〟

そう思ったそうだ。 そして彼女はこう考えた。

技術が低くても成功する独自の手法

 

〝画力の高さや絵の上手さで競い合うのも、展示会イベントに参加するのも個展をやるのも何か違うと思う。〟

〝かといって、私は他の何かが優れているわけじゃないけど何かきっと解決の糸口はあるはず〟

彼女はそう思い、周りを見渡してみるとほとんどのイラストレーターが内向的で他者とのコミュニケーションが苦手だということに気づいた。

そして、同様に彼女自身もまた、内向的で他者とのコミュニケーションは苦手である。 どちらかといえば、とても苦手である。

普通ならそこで諦めるところだが、彼女は違った。

思い込みからスタートした

 

何と、新しい環境(フリーのイラストレーターとして仕事をする環境)に入ると同時に、自らを【コミュニケーション力が高い人】と強く思い込んだ。

そして、【コミュニケーション力が高い人】を演じ続けた。 すると不思議なことが起った。

最初は演技でコミュニケーション力が高い人を演じていたが、次第に周りが彼女を【コミュニケーション力が高い人】と、扱うようになるにつれ、いつの間にか本当に彼女は【コミュニケーション力が高い人】になったそうだ。

そんな彼女の話を聴いて、わたし自身のことを顧みた。

新しい環境でも古いままの自分自身で居るだろうか? それとも新しい環境でなりたい自分自身のイメージがあるだろうか・・・と。