川村 みきをのメモ帳

日々のアウトプットをメモっています。

現状維持と新しい世界CR004

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「わたしはイラストが描きたいんです…」

 

以前お仕事をご一緒したことがあるイラストレーターのTさんから電話があった。

ちょうど、これまで使っていたガラケーを解約したので、SNSで携帯に登録されている電話番号に一斉に新しい番号を連絡した直後だった。

 

「お久しぶりです、お元気ですか?」

 

そんな何気ないひと言から始まった会話の終盤に、来週にでもお会いしたいと言われた。 だけど、わたしが彼女と会う理由が見あたらないし、ダージリンでも飲みながら午後の優雅なひと時を楽しむ…なんて事をするほど時間的な余裕も見つからない。

電話口で「会いたい」というその真意は…

 

彼女が会いたいという意図をそれとなく聞いてみるとそれは、保険の勧誘だった。

彼女は今、保険会社の外交員を始めたらしく、それで、家族・親戚・友人に保険の勧誘し尽くして、どうしようと悩んでいた時にわたしから番号変更のメールが届いて、それで電話してきたそうだ。

Tさんとはsbccで名刺制作を始めた時に知り合った。

Tさんは様々なスキルを持っていた。

わたしがホームページの制作技術を本を見ながら学習していた時に、Tさんはウェブデザインをやっていた。

でも、そこにいた全員が食べていくほどの案件数は無かったから、制作の仕事が無い時はわたしとTさん以外の他のメンバーは営業活動に出ていた。

そんな時にTさんから、こんな事を言われた。

「私はイラストが描きたいんです。」

「だから、sbccの名刺を作ったり、写真素材を集めたり、ホームページを作ったり、ブログを書いたりといった他の人の制作のお手伝いをしたり…そんな事はしたくないんです。」

「私は電話は嫌いなんです。」

「営業なんて死んでも嫌!!」

そんなことを言っていた。

 

わたし達の根底にあったひとつの価値観

 

当時のわたし達の根底には、あるひとつのテーマがあった。

それは、〝have toな事柄(しなければならない事柄)はやらない、want toな事柄(やりたい事柄)だけに集中する〟ということ。

だから、Tさんにとっては営業をすることが〝have to〟なことならそれは、やらなくてもいいと思う。

Tさんにとっての〝want to〟が、〝イラストを描くこと〟ならそれだけをやっていくことに何の矛盾もないと思った。

だけどTさんはその当時、住んでいる所の近くのスーパーマーケットでバイトをしていた。 そしていつもそのスーパーマーケットのバイトを辞めたがっていた。 それって・・・〝have to〟な事柄なんじゃないのかな・・・当時そう思って何気なく聞いたことがある。

Tさんからの答えは生活費を得る為には仕方ないということだった。

ずっと続けて来たし、私(Tさん)が抜けるとシフトが回らないから・・・とも言っていた。

 

そんな日々から二年後にもらった電話

 

あれから二年後、Tさんは保険の勧誘員として働いていてわたしに電話をかけてきた。 電話口でしきりに保険商品の勧誘をしてくるTさんに聞いた。

わたし:「それって?何の為にやっているの?」

Tさん:「何の為って?生活の為に決まっているじゃないですか!」

以前と同じ答えだ。

わたし:「イラストは描いているの?」

Tさん:「今は(保険勧誘員の)研修期間で忙しくてそんな時間は無いです。」

一日の生活の、そして人生のほとんどが生活の糧を得るための〝have to〟な事柄になってしまっている。 〝電話が大嫌い〟と言っていたTさんが、一日の大半を電話をかける作業に使っていた。

「営業なんて死んでも嫌!!」と言っていたTさんは必死に保険の営業をしていた。

古い価値観にしがみつく現状維持の生き方

 

イラストを描いてそれだけで生活をしていける人なんてわずかしか居ないことは分かっている。

だけどやりたくも無いことだけをやっていくしか選択肢が無いわけじゃない。

では何故?Tさんは他の選択肢を選べなかったのか?

Tさんは自分の古い価値観にしがみついていて、彼女の人生の目的が「現状維持」になっているからだ。

だから、新しい世界を見ようとしないし、開こうともしない。

そして、「現状維持」を目的に生きているからどんどん現状が悪くなっていって、生き辛くなってきているのだ。

「現状維持」は必ず崩壊する。

現状維持とは進化をしないということ。

進化をしなかった恐竜は絶滅した。 進化を受け入れた猿は人類になってこの世界に今も生きている。

人生には必要な時に必要な…

 

人生は必要な時に必要な人が現れるという。

あの時のわたしにとって、Tさんとの会話は必要だったのだ。

おかげで改めて「現状維持」と向き合う気持ちになれた。

急激なスピードで生き辛さが増している世の中になっている。 そんな世の中で古い価値観にしがみつく理由はどこにもないように思う。

さて、古い価値観にしがみつき進化を受け入れない恐竜になって滅びるか… それとも新しい世界を見て、進化を受け入れ猿から人になって栄えるか…