生み出してしまう更なる失敗CR024
【約束は守らなければならない】ということは、その時点では、【約束を守ることが出来ていない】 という自分のイメージを強烈に想像することになる。
そして・・・・
【人は心で想像した事を実行する生き物】
といった大原則どおりに、わたし達は同じ失敗を繰り返してしまうことになってしまった。
つまり、『約束を守ることが出来ない』自分自身を強烈にイメージしたことにより、心のほとんどを占めている無意識では、『約束を守らない自分でいよう』ということを実行しようとしていたのだ。
だから、わたしはメールの返信をすることや電話の対応をすることがとても苦痛になってしまった。
何故なら、メールの返信をすることも電話の対応をすることも『約束を守る自分』になってしまい、無意識でイメージしている【約束を守る自分】とは違うからだ。
だから、意識ではやろうと努力しても、こころのほとんどを占めている無意識がそれを阻止しようと働いていたのだ。
このことはわたしだけではなく、他のsbccのクリエイターもそうだった。
それでも、sbccを続けていく以上、メールは届くし電話も来る。
そして、あのようなクレームの事件があったので、二度とメールや電話の放置をすることは出来ない。
だから、意識して時間を決めて、頑張ってメールを返す。
【約束は守らなければならない】からだ。
だけど、日を追うごとにわたし自身が返しているメールを見て、クリエイターが返しているメールを見て思う事があった。
それは、メールの内容が限りなく薄く、そして単調なものになって来ているということだ。
そして時間が経つにつれ手を抜き出した。
つまり、一度書いた文章をコピペして貼って返したりした。
そう、勝手に効率化をし始めたのだ。
メールを受け取ったよ。という意思表示は確かに大切だが、そのメールを読み、こう感じた、こんな風に思ったという、意図を相手に伝えることこそ、【コミュニケーション】ではなかったのだろうか?
こんな機械的な作業をするなら、特にキーボードを打ち込む必要はない。 メール機能に「自動応答メール」というのがあるのでそれにセットしておけば、メール着信と同時にメール返信を行ってくれる。それを使えばいいのだ。
でもそんな事を繰り返していると、今度は別の問題が起きてきた。
それは、制作しているsbccやWebなどの作品の品質が落ちてきたのだ。
これまで、「私あまりイラスト描くの上手くないので恥ずかしいです。」と、言っていたクリエイターでも、sbccを制作してクライアントからお礼を言われると嬉しそうに次の作品の制作に取り掛かっていた。
でも、わたし達のコミュニケーション能力が足りなかったせいでそんなクライアントを悲しませてしまったという事実を知り、
【約束は守らなければならない】
ということを自分自身に課すようになり、大きな[ have to ]が心を支配するようになっていった。 そして、これまで[ want to ]でやっていたことに手を付けられなくなってしまったのだ。
それは、例えば漫画を読むことが大好きで、漫画を読むことが[ want to ]な人が、明日は早起きして人生を左右する会社の面接に行かなければならない。[ have to ]この会社は父親から紹介された重要な会社で朝8時に会社に行かなければ、父親の顔に泥を塗ることになりそれは非常にまずい。
そんな前の晩に大好きな漫画を読んでいても、明日の会社の面接の事が気になって、漫画を心から楽しめないだろう。
これと同じ現象が起きていた。
【約束は守らなければならない】
が心の枷(かせ)になり、[ want to ]で心から楽しく取り組んでいたsbccの制作が色を失いあせていった。
それが、作品のクオリティを落としていた。 そしてわたしをはじめクリエイターの誰もがこの状況はよくないと感じていた。
『せっかくフリーのイラストレーターになる事を夢見て地方から上京して、sbccに巡り合って、仕事が舞い込み、人に認められて忙しくなっていった矢先、こんな事で諦めたくはない。』
そう思ったあるクリエイターは、
これまで以上に個展を開き、合同イベントに作品を出品した。
そしてわたしはセミナーなどに参加して、そこで映像を撮るようになった。
これは、[ have to ]な事柄の時に必ずついて来るクリエイティブ・アボイダンス[創造的回避]の症状だった。
頑張ってみた。 約束を守ることは大切なことだと説得した。 そして気を紛らわせて他の事に取り組んだ。 あまり深く考えずに事務的に済まそうとした。 お金をもらっているので割り切った。
そして日常から色が失われていった。
何をやっていても何だかしっくり来ない。
美味しいはずの料理も砂を噛むような感じがすることがある。
だけど、時々は展示会や個展などで人に評価されると気分が高揚することがあった。
撮影していて「凄いね!」って言われると嬉しくなった。
だけど、そうじゃない日は虚しかった。
人に評価されて気分が高揚する分、その反動で気分が落ち込むことがある。
そしてこの時期にピーク時は28人くらい居た、sbccのクリエイターの多くが消えていった。
わたし自身も撮影で忙しいとか言い訳をして、あまりsbccの制作の案件を取らなくなった。
それでも、
Webサイトから自動的に申し込みが来る分や、紹介で申し込みが来る分や、クチコミで申し込みが来る分があり、制作案件自体はなくならないでいた。
みんなが離れていったそんな時期に、それでもsbccの制作を依頼を受けて対応していたsbccのクリエイターがいた。
それは、わたしを除く初期のメンバーのうちの3人だった。
わたしや他のsbccのクリエイターが、【約束は守らなければならない】という[ have to ]な事柄で、クリエイティブ・アボイダンス[創造的回避]が発動し、他の事に気を取られていたり、他人に評価してもらう為に決めた事ではない他の事で時間を使っていた時、この3人だけは違ったようにわたしからは見えた。
その時は、意思が強いんだな・・・と思っていたが、3人とも特に意思が強いというわけではなかったということが後になって分かった。
それは3人の内、誰一人として、頑張っていないし、自分を説得していないし、気を紛らわすこともしていないし、ちゃんと大切に考えてやっていた。
そうなんだ、この3人にだけは、クリエイティブ・アボイダンス[創造的回避]が発動していなかったのだ。
それは何故か?
それは、この3人以外の全員は、今回発生したsbccのクレームの一件で、
【約束は守らなければならない】
と受け止めていた。
だけど、この3人は違った。
【約束は守るもの】
と受け止めていたのだ。
だから、【約束を守ることが出来ていない】という自分自身を強烈にイメージすることもなかったというわけだ。
だからこの3人には[ have to ]な事柄が発生していなかった。
それぞれに起こった出来事は全く同じ。
sbccの制作をしていて、わたしをはじめ、sbccのクリエイターのコミュニケーションの能力が不足していた為にメール対応や電話対応が遅く、あるいは無かった事で、クライアントに迷惑をかけてしまった事実。
同じ事柄からそれぞれが受け取った事が、似てはいるが大きく違っていた。
【約束は守らなければならない】
と、
【約束は守るもの】
似て非なるこの捉え方――――。
同じ出来事でも片方は、クリエイティブ・アボイダンス[創造的回避]を発動させてしまった。
そしてもう片方はいい経験を積めたと、更に高いレベルでコミュニケーション能力を磨いていき顧客とのつながりを深めていった。
その違いは何なのか・・・・・?
それは・・・・・